植物目録について

東京の植物相を明らかにする意義

高度に開発された市街地の印象が強い東京ですが、亜高山帯の山域から低地の沿岸部まで多様な地形や水系に基づく自然を有し、さらに伊豆諸島や小笠原諸島の島々には固有性の高い植物も生育しています。また、国内外の物流の拠点でもあることから、常に新たな外来種が侵入や定着する機会も多くあります。このように、変化の著しい東京では植物の現状を明らかにすることが生物多様性の保全や回復につながると考えています。そこで東京都は、2024 年度より「いつ、どこで、どんな植物が生育していたのか」を把握できるデジタル版野生植物目録作成のための事務局を東京都立大学牧野標本館に設置しました。
他の分類群と同様に標本・文献・市⺠科学調査での情報収集を進めるほか、植物については専門家による現地調査(フロラ調査)を実施し、最新の自然の実態を指標する植物の記録を進め、都内の植物相の解明に向けて情報を蓄積しています。

東京都野生生物目録「植物」(植物目録)

東京都野生生物目録では、過去から現在までに記録された野生生物の種を取りまとめています。植物については、標本情報から下記の通り段階的に公表を進めていきます。

東京都野生植物目録完成までのフロー

【東京都植物目録*暫定版(植物標本の一部)】(2025 年 12 月公表)

植物標本は、過去から現在に至る植物の分布状況を把握するための証拠としてとても重要です。今回、各地の関係機関の協力を得て標本情報を収集しました。また、収集した情報については、必要に応じて再同定などを実施し、正確な情報となるよう努めました。
今回公表する目録は、東京産野生植物全種目録作成に向けた第一段階と位置付けております。
東京都野生生物目録(リスト)を見る

植物標本を目視で再同定する作業の様子
植物標本の再同定作業の様子

<掲載情報>
植物標本情報の一部(115,840 件、4,179 種)を収録しています。
なお、今回の公表はタケ・ササ類及び未同定の標本情報を除いています。
また、栽培されていたと有識者が判断した情報については今回の目録からは除いています。

科、属、種の配列や、学名、和名については、有識者の監修のもと APG IV の分類体系にのっとり、Ebihara et al.(2023)、 IPNI(2025)、 海老原(2016a, b)、山ノ内ら(2019)、矢原 他 (2024)、米倉・梶田 (2003-)を参考にしています。※参考文献の詳細はこちら

今回収録した標本情報の提供機関は以下の通りです(五十音順)。
・国立科学博物館
・東京都立大学 牧野標本館
・八王子市
・パルテノン多摩ミュージアム
・日野市郷土資料館
・福生市教育委員会

2025年12月16日現在、掲載している植物標本レコードの一覧は、こちらからダウンロードいただけます。

・本土部CSVファイル(30.6 MB)
・島しょ部CSVファイル(10.1 MB)
・その他*CSVファイル(4.5 MB)

*「その他」には位置情報不明なレコードと希少種のため位置情報を表示していないレコードが含まれています

<掲載情報に関する留意点>
内容については今後もデータの再チェックを繰り返し、より精度の高いデータベースの構築に向けて更新を進めている最中です。データは細心の注意を払い情報提供しておりますが、目録のご利用は利用者の責任で行っていただきますようお願いいたします。間違いや不明な点が見つかった場合は、お手数ですが事務局までご連絡下さい。
その他、掲載に関する留意点は、こちらからご確認いただけます。
掲載に関する留意点はこちら

目録の監修者と「植物のコラム」

今回、「東京都植物目録*暫定版」をとりまとめるにあたり、こちらの専門家に監修いただきました。

加藤英寿氏の写真
加藤英寿氏
1963 年生まれ。静岡→⻑野→千葉→愛知で育つ。富山大学理学部卒業→千葉大学大学院理学研究科修士課程修了→京都大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士)。専門は植物系統学・保全生物学など(いろいろやりすぎて、何が専門か自分でも分からなくなっている)。
内野秀重氏の写真
内野秀重氏
1959 年東京都立川市生まれ。東京農業大学農学部卒。地方公務員から環境コンサルティングに転身、植物調査業務に従事後、八王子市⻑池公園の管理に携わり 2013〜2023 年まで同園園⻑を務める。2024 年より都立大学牧野標本館特任研究員。植物レッドリスト改定委員や緑地保全地域アドバイザーとして東京都の野生植物保全に関わる。立川市・八王子市・日野市文化財保護審議会委員・パルテノン多摩自然観察会講師。2012 年に発表された新種ハチオウジアザミの発見者でもある。著書に『新八王子市史自然編』(八王子市)「理科を育てた挿絵画家 天木茂晴」(町田市立博物館)などがある。

また、今回の公開とあわせて、東京の植物標本に関するコラムを執筆いただきました。

東京いきもの台帳・植物分野 ニュースレター 「TOKYOENSE」

東京いきもの台帳植物目録作成事務局では、ニュースレターを作成しています。目録作成に向けた現地調査の様子や東京の植物に関する各種コラムなども掲載されています。
→TOKYOENSE

※参考文献
Ebihara, Atsushi; Fujiwara, Tao; Takamiya, Masayuki; Ito, Motomi; Yahara, Tetsukazu. 2023. FernGreenList ver. 2.0: An Updated Checklist of Wild Fern and Lycophyte Species in Japan. National Museum of Nature and Science. Dataset.
https://doi.org/10.57400/data.bnmnsbot.22696618.v1

IPNI (2025). International Plant Names Index.
Published on the Internet http://www.ipni.org,

海老原 淳 (2016a, b)
『日本産シダ植物標準図鑑 I』 学研プラス pp476 ISBN978-4-05-405356-4
『日本産シダ植物標準図鑑 II』学研プラス pp508 ISBN978-4-05-405357-1

山ノ内崇志・首藤光太郎・大澤剛士・米倉浩司・加藤 将・志賀 隆 2019.
「維管束植物和名チェックリスト」
(https://gbif.jp/activities/checklist/wamei_checklist_110)

矢原徹一 他, 2024.
新種候補植物図鑑速報版 1・2 九州オープンユニバーシティ出版局 2024.5

米倉浩司・梶田忠, 2003-. 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList),http://ylist.info
20210514YList_download 版および Web 版