クモ目録について

東京のクモ相について

クモ類は山地や草原、湿地、畑地や市街地まで、様々な環境に生息しています。また、小さな昆虫などを捕食する一方、鳥やカエル等他の生物の餌にもなっています。このように、クモは様々な生物と関わり合いながら生態系を支える存在です。
このように自然環境を把握するうえで重要となるクモの情報を、2025年5月に「東京いきもの台帳」に加えました。その結果、東京には693種(2025年5月現在)が生息していたことが確認できました。これは、全国の都道府県で最も多い数であり、国内で記録されている種の約4割にあたります。東京は、面積は小さいものの、山地、島しょ、市街地など、多様な環境を有していることが、クモ類の多様性を支えていると考えられます。また、多くの研究者等により、東京のクモの生息情報が調査、記録されてきたことも多くの種が記録されている要因の一つと考えられます。今後も、いつ、どこに、どんなクモがいた、という記録を蓄積していくことが重要です。

東京都野生生物目録「クモ目」(クモ目録)

東京都野生生物目録では、過去から現在までに記録された野生生物の種を取りまとめています。
クモ目録では、693種及び1亜種(2025年5月現在)について収録しています。
科、属、種の配列や、学名、和名については、小野(2009)*1、新海(2017)*2、小野・緒方(2018)*3、新海(2021)*4、およびWorld Spider Catalog(WSC), ver. 25.5(2024)を参考に、有識者による監修のもと組み立てています。
*1 小野展嗣(編著),2009. 日本産クモを検索類.xvi + 739 pp. 東海大学出版会
*2 新海栄一,2017.ネイチャーガイド,日本のクモ,増補改訂版.408 pp. 文一総合出版
*3 小野展嗣・緒方清人,2018.日本産クモ類生態図鑑. xiii + 714 pp. 東海大学出版部
*4 新海栄一,2021,東京都産クモ類,Kishidaia,118:141-211
東京都野生生物目録(リスト)を見る

クモ目録に収録されている情報について

東京いきもの台帳には、標本・文献の情報、市民科学による情報、そして有識者による観察情報を含めた約45,000件(2025年5月時点)の記録が収録されています。
公開しているクモ目録に収録されている情報は、こちらから検索いただけます。

クモアイコン
検索アイコンクモを検索

【標本】
標本情報としては、国内外の博物館等に収蔵されている標本の情報や、谷川明男氏にご提供いただいた、谷川明男氏所有標本の情報等を掲載しています。
【文献】
文献情報としては、Kishidaia(東京蜘蛛談話会)やActa Arachnologica(日本蜘蛛学会)、Atypus(東亜蜘蛛学会)等の同好会誌や学会誌、学術雑誌等を中心に様々な文献を活用しています。
【観察記録】
観察情報としては、監修者である新海栄一氏からご提供いただいた有識者による調査記録や、杉並区自然環境調査での調査記録等を掲載しています。

【市民科学】
市民科学情報としては、「東京いきもの調査団」でみなさんから投稿いただいた4,200件以上の162種(2025年5月時点)のクモの情報も活用しています。これら全ての情報は、専門家による種同定(種名が正しいかの確認)を行っています。
「東京いきもの調査団」では、継続的に調査を実施しています。その活動内容や活動レポートなどはこちらで発信しています。
東京いきもの調査団 公式ウェブサイト

東京いきもの調査団で実施したクエスト(Biomeアプリ内の調査イベント)のヘッダー画像
東京いきもの調査団で実施した
クエスト(Biomeアプリ内の調査イベント)のヘッダー画像

【情報の精査と留意点】
クモ目録作成においては、確実な記録の収集に努めています。例えば、文献情報は原典にあたることを原則とし、生息記録が記載された資料については再現性のある状態で収集しています。観察情報については、有識者から提供された調査記録等を活用しています。そのため、目録内の情報の一部は、東京都レッドデータブックや、『東京都産クモ類』(新海、2021)に掲載されている情報と異なる場合があります。
その他、掲載に関する留意点は、こちらからご確認いただけます。
掲載に関する留意点はこちら

目録の監修者と「クモのコラム」

クモ目録をとりまとめるにあたり、こちらの専門家に監修いただきました。

小野展嗣氏の写真
小野展嗣氏
1954年生まれ。学習院大学法学部卒業、ドイツ・マインツ大学生物学部中退。理学博士(京都大学)。国立科学博物館研究主幹(九州大学客員教授兼任)を2019年に定年退職し現在名誉研究員。日本動物学会永年会員、日本蜘蛛学会名誉会員。専門分野は動物学、昆虫学、とくにクモ類。ベトナム、タイ、ミャンマーなどを踏査。国際クモ学会賞受賞(2010年)。小学館の図鑑NEO『昆虫』・『危険生物』、『節足動物の多様性と系統』(裳華房)、『日本産クモ類生態図鑑』(東海大学出版部)、『あしの多い虫図鑑』(偕成社)など著書多数。
新海栄一氏の写真
新海栄一氏
1948年東京都国分寺市生れ。中学時代よりクモの研究を始める。高校1年の時、東亜(現日本)蜘蛛学会入会。主な業績としては、日本列島のクモ相の全容解明、造網性クモ類の網型61種類の解明、アジアで最初のナゲナワグモの発見等がある。現在東京蜘蛛談話会会長。「ネイチャーガイド日本のクモ」(文一総合出版)、「フィールド図鑑・クモ」(東海大学出版会)、「田んぼの生きものたち・クモ」(農山漁村文化協会)など著書多数。

また、クモ目録の公開とあわせて、東京のクモに関するコラムを執筆いただきました。クモの生態や生息環境などについても知識を深めながら、クモ目録をご活用ください。ぜひ、みなさまご一読ください。